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365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「始まりの予感」

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オレンジ色のライトに包まれ、

クラシックが流れる店内。

もうホットが染みる季節になったなぁ

なんて思いながら、

コーヒーからあがる湯気を眺める。

 

一大イベントだった「大晦日」は、

年越しを経て徐々に特別感が

薄れていって、気がつけば

変わらない日常生活。

 

 

目の前にいる彼女は、

温かい紅茶を上品に飲んでいる。

明るい色のミディアムヘアー。

パッチリとした目は、 笑うと

線で書いたように細くなる。

座っているといっそう小柄に見えるのは

気のせいか。

 

 

路上で歌っていた彼女を見たとき、

何かを感じた。

恋とかそういうものじゃなく、何かを。

耳に飛び込んできた彼女の歌声に

聞き惚れてしまったのだと思う。

そういう意味では、恋なのかもしれない。

 

あのとき、立ち止まって聴いていたのは

たぶん俺だけ。

歌い終わったあとにこちらへ 歩み寄ってきて、

「ありがとう!」と言ったあの笑顔は、

絵には描けないほど綺麗なものだった。

 

 

そのせいだ、きっと。

 

 

言うべきか言わないべきかを考える機能が

働く前に、言葉を発していた。

 

「あの...俺は!いつかみんなが手に取って
くれるような本を書くのが夢で!だから...
キミの曲を俺に書かせてくれませんか!」

 

 

なにがどうなったら

「だからその」なのか。

本当に日々言葉と向き合っている人間かどうか

疑われるくらい文脈はバラバラで、伝えたい

ことをただ並べているだけ。

それなのに彼女は、

 

 

 

「その素敵な夢、私も一緒に

連れてってくれるかな」

 

と、笑顔で言ってくれた。

これが千春との出会い。

 

こうして、奇跡的に住んでいるところが

さほど遠くなかった俺たちは、

近況報告という名目で顔を合わせている。

 

成立するかしないかも分からないような
男女の友情関係とは訳が違う。

 

いや、これはきっと友情じゃない。

2人の関係に名前をつけなくちゃ

いけないルールはない。

いつか分かる日が来るのを

楽しみにしたっていいと思う。

 

キュンキュン溢れる展開なのか、それとも
ドロドロの三角関係が完成するのか。

 


誰にも分からない結末を作っていく。

これが、人生というドラマ。