読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「2017」

f:id:yuu_ayasaka:20170102010309j:image

 

 

 

「3、2、1...

    明けましておめでとうございまーす!」

 

 

 

テレビから聞こえてくる明るい声。

飛び散る金銀の紙テープ。

テロップで大きく「2017」の文字。

 

一年でこんなに秒まで気にして

時計を見るのは、

年越しの時くらいじゃないか。

あ、あとカップラーメンもか。

 

 

「翔!早く着替えろよ!初詣行くぞ!」

 

「えー、やだよ、寒いじゃんか。

   昼頃でいーじゃんか」

 

「じゃんじゃんうるせーな!

   去年だって行ったろ!

   ほら、つべこべ言ってねーで」

 

「わかった、わかったから引っ張るなっての!

   直樹と亮は元気すぎんだよ!」

 

「そりゃあ、一年の始まりは

   一番元気出していかねーとな」

 

「そうそう!毎年のこの集まりを楽しみに

   仕事頑張ってるようなもんだからな」

 

 

男2人に引きずられては

さすがに抵抗できない。

 

「まったく...」

 

 

案の定、外は痛いように寒い。

ハーっと吐き出した息は、煙みたいに

空へ上がっていく。

 

 

決まったメンツで年を越し、

地元の神社へ行くのが恒例行事。

毎年変わらないことだけど、心持ちは毎年違う。

 

 

 

2016年を思い返すと、とにかくひどかった。

何をやってもうまくいかなかった。

どんどん焦って、焦れば焦るほど

やる気は空回りした。

それでも月日は流れて、

気づけばあと半年、3か月、1か月...と

あっという間に一年が終わってしまった。

 

 

負け続けた一年。負け癖をつけちまった一年。

自分に自信なんて持てなくなって、

もがいてばかりだった。

 

 

「ほら見ろ!翔がダラダラしてるから

   もうあんなに人がいるじゃねーか」

 

 

遠くから聞こえていた鐘の音が

どんどん近くなる。

パチパチと音を立てた火の光に照らされ、

たくさんの人が目に映る。

 

 

神社の鳥居をくぐる瞬間、

信じられない光景が飛び込んできた。

 

目の前に男3人組。

人違いじゃない、俺が目の前にいる。

直樹も亮も一緒だ。

 

「翔、何をボーっとしてんだよ」

 

どうやら、他の2人に

この光景は見えていないようだ。

 

『さみーよー。とっとと済ませて帰ろうぜ』

 

『翔はそればっかじゃねーか。

   ぜーったいおみくじは

   ひいてから帰るからな」

 

『お前は毎年凶だろ、懲りねーなー』

 

自分たちの声が聞こえてくる。

なんだ、この感じ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出した。

 

 

 

目の前にいる光景の正体は、

去年の自分たちそのものだ。

 

 

順番待ちの列は進み、

気がつけば次は俺の番。

賽銭箱の前、去年の俺が横にいる。

 

 

(今年一年、大きな病気になりませんように。

あきらめずに、さぼらずに毎日頑張るから、

少しでも目標に近づけますように)

 

 

そっか、そんなお願いしてたんだっけ。

すまんな、去年の俺。

期待に応えられなかったよ。

 

お賽銭を投げ入れる。

カランカラン、と音を鳴らす。

ふと横を見ると、見えていた去年の俺は

跡形もなく消えていた。

 

なんだったんだ、一体。

 

もしかして、思い出させてくれたのか、

去年の俺の言葉を。

腐りきった俺に、もう一度聞かせて

くれたのかもしれない。

 

 

任せろよ。

今年の俺が、お前の分まで

背負って走ってやる。

楽しみに待っててくれよ、来年の俺。

 

お参りを終えると、階段を降りたところで

直樹と亮が待っていた。

 

「翔、なにニヤニヤしてんだよ」

 

「してねーよ!ほら、さみーから

   とっとと済ませて帰ろーぜ!」

 

来てよかった。

足は軽く、気持ちも軽い。

 

2017、きっといい年になる。