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365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「人の人生ばっかり輝いて見える」

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去年のこと。

なんか面白い映画ないかなー

って探してたら、気になるのがあって。

 

原作読んでたから内容は知ってたけど、

頭の中のものが現実になったら

どんな感じなのか、

気になって確かめに行った。

 

 

 

 

朝井リョウさんの『何者』

 

就活に苦悩しながら自分という存在に

葛藤する大学生の姿が細かく描かれてる作品。

観終わったあとの衝撃は

原作読んだときの倍以上。

 

 

 

「大学生って、スゲェ。」

 

 

大学生というものを経験してこなかったから、

まっっったく未知の世界。

「サークル」「ゼミ」「インターン」とか

知らないし、もはや呪文レベル。

 

 

毎日の生活を当たり前に過ごす大学生。

そんな大学生が大学生をしている最中、

俺は高卒で社会に飛び込んだ。

営業もガンガン飛び込んだ。

 

いやー、これがもうしんどいのてんこ盛り。

朝っぱらから上司の雷は落ちるし、

生まれて初めて使う敬語で

ヘンテコな言葉を生み出すし、

タイピング出来ないから

人差し指だけでメール作るし。

休日に本屋行って

「敬語・マナー入門」を立ち読みしてたの

懐かしいなぁ...。

 

 

 

いつものカフェ。

2人のお決まりの場所。

当時のことを千春に話す。

 

 

「あんときは最悪だったなー。

周りはみーんな大学生で遊びまくってたし。

うらやましかったなー」

 

 

「自分にとって当たり前の経験ってさ、

他の人からしたら特別だったりするんだよ」

 

 

そりゃ確かに、

あの頃の俺にとっては当たり前の生活。

それが...特別?

 

そして、こう続ける。

 

 

「経験にはさ、きっと選択肢があってね、

短いものもあれば、長ーいものまで。

今度の休日に美味しいご飯を

食べに行く人もいれば、

スポーツで体を動かす人もいる。

会社に勤めて働いてる人もいれば、

歌を歌ってる人もいる。

みんなが別々の場所で、色んな経験をしてる」

 

 

「だからって、みんながみんな

選べるわけじゃない。ツライ経験なんて、

誰だってしたくないのは同じだろ」

 

 

「そりゃそうよ。

悩みとか不安がおまけでくっついてきちゃう

こともあるよね。でも、今日っていう一日、

今年っていう一年、選んだ経験は

誰かにとって特別なの。

私は、翔くんの経験をしてないから

その話はできないもん」

 

 

色んな人の特別を背負ってる...か。

千春は人と見てる世界が違うのかもしれない。

俺も十分まともじゃないけど、それ以上に。

それが正解、不正解なんてのは

どうでもよくて、新鮮な言葉として

耳に入ってくるのが心地良い。

 

 

「これからさ、翔くんがまた

同じようなことで考えこまないように...」

 

 

そう言って、千春はカバンの中を

ゴソゴソとあさり、何かを取り出した。

 

どこにでもあるような小さな紙とペン。

 

「人の記憶なんてあてにならないの。

一回聞いた言葉でも、すぐに忘れちゃう。

引き出しにはしまってあるのにね、

どこにあるのかわからなくなっちゃうの」

 

 

「そりゃあ、毎日たくさんの言葉を目にして

耳にしてるからな」

 

 

「そう。だからね、

こうして目で見える形で残しておけば、

すぐに引き出せるでしょ」

 

 

なんでもない紙が、一瞬のうちに

特別なものになった。

言葉は、人が使える唯一の

魔法なのかもしれない。

 

 

「ま、この紙をどこにしまったか

忘れたら意味ねーな」

 

 

「もう!なんですぐそうやって

ひねくれるの!」

 

 

「ウソだよ、わりぃわりぃ。

大事にするよ、ありがとな」

 

 

こうしてもらった言葉を残していけると

思うと、なんだかそれだけで強くなれる。

 

一人歩く帰り道、もらった一枚の紙を見ながら

そんなことを思っていた。

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