365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「言葉は誰のもの」

 f:id:yuu_ayasaka:20170108210608j:image

 

 

 

 

寒い。。。

 

 

毎年のように言っている。

絶対に今年が一番寒いと思う。

 

 

日も暮れてきて、

あたりはオレンジ色に照らされている。

 

近所にある公園。

小さい頃から野球をしたり、鬼ごっこをしたり

たくさんお世話になった公園。

 

たくさんあった遊具も、

今は古びたブランコが一つあるだけに

なってしまった。

 

 

そもそも、人通りのほとんどない

こんなところに、公園がポツンと

立っていることの不思議さには

最近になって気づいたくらい。

 

珍しく子供達が遊んでいたみたいだ。

時間になったら鳴り出すチャイムを合図に、

帰る支度をしてる。

 

「カラスが鳴いたら帰りましょー!」

 

「腹減ったぁー!今日ご飯なんだろなー!」

 

 

聞こえてくるそんな声たちが懐かしい。

遊び疲れてヘトヘトになったときは、

今夜の晩ご飯を楽しみにしたもんだ。

 

 

「また明日なー!」

 

「おー!またなー!」

 

 

子供達がいなくなると、

あたりはビックリするくらい静かになった。

 

 

時折吹く冷たい北風が、

ビュービューと音をたてる。

 

「さむっ」

 

 

すると、遠くから

誰かに呼ばれてる気がした。

 

 

「おーい、翔!なにしてんだー

こんなとこでー」

 

 

幼馴染の直樹だった。

直樹とは小学生からの仲で、

気づけば10年以上の付き合い。

 

直樹とも、

よくこの公園で遊んだもんだ。

 

 

「はぁー!さむっ!

なんなんだよホント。

これでまだ1月って信じたくないわー」

 

「そのわりに元気そうに見えるのは

気のせいかい?」

 

「テンション上げてかなきゃ

やってけねーだろ!

あー、絶対に今年が一番寒いっ!」

 

思わず吹き出してしまった。

おんなじこと言ってやがる。

やっぱ似た者同士なんだな。

 

「なーに笑ってんだよ!

翔、最近どうよ?元気でやってる?」

 

 

「この間亮も一緒に3人で年越して、

初詣も一緒に行ったろうが」

 

「あれ、そんな最近だったっけ」

 

「まだ年明けから1週間しか

経ってねーんだぞ」

 

 

「でももう1週間かー、はえーなー。

今年もボーッとしてたら

あっちゅう間に終わんだろーなー」

 

「そうかもな。今日は?仕事終わりか?」

 

「あぁ、今帰ってきたとこ。

久々にこの公園来たくなってさ、

ふらーっと寄ったら

まさかの翔がいての今よ」

 

「なんかここって妙に落ち着くからな」

 

「俺らさ、昔はあんなにバカみたいに

毎日一緒に居たのにな、もう1年で何回かくらいしか

会えてねーもんな」

 

直樹はバカだし、テンションもバカだし、

頭も実際にバカだけど、

昔から仲間思いで、ふいに

アツイ言葉を放ってくる。

 

 

「まぁ、そうだな。

そりゃ社会出たり仕事があったり

なんだりかんだりあれば、

いつまでもって訳にはいかないな。

でも、こうやって近所にいるんだし、

いつでも会えんだろ」

 

 

「いつでも会えるー、とか言って

翔はいっつも忙しそうにしてっから

なかなか会えねーんだろうが!」

 

「わりぃ、わりぃ」

 

 

 

「俺さ、春からこの街出るんだ」

 

 

時が、止まった気がした。

思いもよらない言葉に、

頭の理解がついていかない。

 

 

「え、なんで?おいおい、

突然すぎんだろ」

 

 

「いや、ちゃんと話そうと

思ってたよ。

だから近々飲みにでも行こーぜ!

そんとき話す!

翔が最近仲良くしてる

春ちゃん…だっけか。

歌歌ってる子!

その子の話も聞かせろよな!」

 

 

「お、おう…」

 

 

「そんじゃ、俺もう行くからよ。

連絡すっから!絶対返せよ!

まったく、翔は連絡しても

見て見ぬフリが得意だからな」

 

突然すぎて、なにがなんだかわからない。

今、すぐにでも理由を全部聞き出したかった。

ずっと当たり前にいると思っていたヤツが

いなくなるという事実に、

胸がぎゅーっと締め付けられた。

 

「そんじゃ、またな!翔!」

 

 

「おう、じゃあな」

 

 

 

「ちげーだろ、じゃあなは

なんか味気ねーだろ」

 

 

「どーゆうこと?」

 

 

「また会えんだから。

またな、だろ?

そしたら俺は、そんときまで

また頑張れる気がすんだ」
 

 

「ほんっと直樹は変なバカだよ…。

俺も頑張るよ!またな!」

 

「なんだそれ!変なバカってそれ

褒められてんのか?」

 

 

「うるせぇうるせぇ!

またな!!」

 

 

「おう、またな!」

 

 

 

 

 

言葉は深い。

 

日本語には、同じ意味でも

言い方を変えるだけで

伝わり方が変わるものがある。

 

 

 

 

 

 言葉はいつも相手のためにある。