読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「いくつになっても」

 f:id:yuu_ayasaka:20170109154518j:image

 

 

 

 

長く降り続いていた雨も止んで、

雲ひとつない真っ青な空が広がっている。

 

家のベランダから空を見上げながら、

ちょうど2年前の今日の日のことを

思い出していた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ふぁー、ねむ…」

 

 

 

「はっはっはっ!翔、なんだよその髪型!

売れないホストかよ!」

 

 

「るせぇな!30分もセットに時間にかけたのに、

風でやられちまったんだよ!

直樹こそ、スーツ全然似合ってねーじゃねぇか!」

 

 

お互いの家の近くのコンビニで待ち合わせ。

慣れないスーツ姿の2人が、景色になじめず

浮いて見える。

 

「あれ、亮は?」

 

「恒例のやつだろ。

連絡来ないからたぶん寝てる」

 

「まったく、あいつはこんな日でも

寝坊かよ」

 

「たしかあいつ、修学旅行んときも

寝坊したもんな」

 

「そうそう。ちょっと経てばどーせ、

わりぃ〜やらかした〜

とか言ってひょっこり現れんだろ」

 

 

「間違いねぇ。

うし!俺らだけで乾杯していくか!」

 

 

「いいね、賛成」

 

コンビニで2本、ビンのお酒を購入。

それぞれ持ったビンを、空高く持ち上げる。

 

 

「じゃあ…俺たちの」

 

「成人祝いに…」

 

 

『かんぱーーーーいっ!』

 

 

ビンとビンがぶつかる

心地良い音が響き渡る。

 

 

成人式の会場は、スーツ、袴、振袖姿の若者で

溢れかえっていた。

 

 

「うわー、スゲー人…」

 

「完全に出遅れた感が満載だな」

 

 

振袖姿の女子は、大人の仲間入りを

宣言しているかのように、とても綺麗に映った。

 

 

 

「翔くん!私だよ!久しぶり〜!
元気してた?」

 

 

「お、おう!久しぶり!
元気元気!」

 

 

誰だー。

わからない、思い出せない。

女子は化粧のせいもあるけど、

大人っぽくなりすぎて、

学生服を着てたときとは随分違う。

 

 

 

それに比べて野郎どもは…

集団になると、ここぞとばかりに

騒ぎ散らかしている。

 

まだまだ子供っぽさは抜けてないな。

もちろん、自分も含めて。

二十歳になったら勝手に大人になるのかと

思ってたけど、そんなこともなかった。

 

どうやったら、大人になれるんだろうか。

 

 

 

「翔〜、直樹〜

わりぃ〜、やらかした〜」

 

 

「亮、おっせーよ」

 

当時の学級委員だった男子が、

ここでもみんなをまとめている。

 

 

「それじゃあ!記念写真を撮りまーす!

1組の人、こっちに集まってくださーい!」

 

 

 

「あっぶねー、写真に間に合って良かったー」

 

「その寝癖だらけの頭でよく来れたな」

 

「ま、これも思い出っしょ!」

 

 

「じゃあいきますよー!

はーい、チーズ!」

 

 

” パシャッ ”

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「亮の寝癖、ほんとにすげーな」

 

みんが浮かべている満面の笑みつられて、

思わず笑いがこみ上げてくる。

 

写真を眺めていると、
今でもあの日の声が聞こえてくるみたいだ。

 

「あれ、なんだこれ」

 

 

写真と一緒に大事にとってあったのは、

母親からの手紙だった。

おそるおそる封をあけてみる。

 

 

 

 

翔へ。

 

この間、あなたが生まれた頃の

アルバムを引っ張り出して、

久々に見てたんだ。

 

親として、子供を無事

二十歳まで育てられたことに

ホッとしてるよ。

 

アルバムの中で笑ってる翔を見たら、

思わず涙が止まらなくなったよ。

もう号泣だよっ!なんでかわからないけど、

涙が止まらないんだよ。

 

 

生まれたときに、看護婦さんに

「男の子ですよ」って言われて、

抱かれてる翔を見たら、

ほんとに私のお腹の中に人間が

入ってたんだ、すごいなって

思ってたんだけど、

それが大きくなって今の翔だよ。

よくまぁ、こんなに大きくなったよね。

 

翔は周りを見て、もっと違う親だったら…

って思うこともあっただろうけど、

お母さんは、翔がお母さんの子供として

生まれてきて、本当に良かったと思ってる。

 

どれだけ大きくなっても、

大人になっても、翔はいつまでも

お母さんにとっては子供だよ。

 

自分の信じた道を突き進んで、

精一杯頑張ってね。

 

ずっと、ずっと

応援してるからね。

 

 

 

 

 

 

 

ぬぐっても、ぬぐっても

こみ上げてくる涙で、前が見えなかった。

 

親の期待に応える、とは少し違う。

今まで育ててくれた親への感謝と、

想いに恥じないよう、

人生を楽しみ尽くすことが恩返し。

 

 

自分を育ててくれた親の強さ。

それ以上に、強く生きていかなくちゃいけない。