365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「この季節を過ぎれば」

 

 

 

 

 

 

 

「また明日ねー!」

 

 

「うん!また明日!」

 

 

友だちと別れのあいさつを合図に、

孤独との闘いが始まる。

 

 

テスト勉強も、受験勉強も、

就職活動だって、

頑張らなきゃいけないときは

いつだって1人だ。

 

 

コンビニやスーパーには、

”合格祈願”のお菓子やグッズが並んでいる。

 

 

「これってホントに、

効果あるのかなぁ…?」

 

 

100%信じてる訳ではないけれど、

やれることは全てやっておきたい。

神頼みでもなんでも良い。

 

本番当日、あの

一発の勝負に勝つために。

 

 

 

学校に行けば見慣れた顔がたくさんいて、

ふざけたり、くだらないことで笑ったり。

その時間だけは、不安なことをぜんぶ

頭の隅へと追いやってくれる。

 

 

でもそれは、ひとつの錯覚。

こうして家に帰ってくると、

頭の中は現実で埋め尽くされる。

 

 

カバンを下ろし、ベッドに寝転がる。

ボーッと天井を見ながら、

思わず寝てしまいそうになる。

 

 

 

 

やる気が…出ない…。

 

 

 

今日こそは頑張ろうと、

あれだけ心に強く誓った。

 

 

なのに、いざやらなきゃいけない

場面になると、なんで身体はこんなに

動いてくれないのか。

 

 

「みんなは、どうしてるんだろう…」

 

 

いや、ダメだ。

人の言葉をそのまま信じちゃいけない。

 

 

「えー、ぜーんぜん勉強してないよー

どーしよー」

 

 

という綺麗すぎる前フリからの高得点。

こんなシーンを、今まで何回見てきたことか。

 

 

かと言って、信じすぎも良くない。

 

 

 

「えー、ぜーんぜん

勉強なんてやってないよー」

 

 

「だよね、良かったー。

じゃあ私もやんなくていーやー」

 

 

 

それがもし本当だったら、

見事なまでに2人揃って共倒れる。

 

 

 

 

「みんな色々言ってるけど、

見えないところで

頑張ってるんだよなぁ…」

 

 

 

見えないのがいけないんだ。

だから余計に孤独を感じてしまう。

 

 

 

ここはひとつ、人生の先輩に

アドバイスをもらおう。

 

 

隣の部屋をノックする。

 

 

「ねー、お兄ちゃーん」

 

 

 

「ん、なんだ?」

 

 

「ちょっと聞きたいんだけどさ、

1人で黙々と頑張んなきゃ

いけないときって、どうしてた?」

 

 

「そりゃあ、1人で

頑張るしかないだろ」

 

 

 

「あの…話聞いてました?

そうじゃなくて!

1人で頑張れないから、

どうしたら良いか悩んでるの!」

 

 

「友だちと一緒じゃダメなのか?」

 

 

「ダメだよ、目標が違うんだもん。

おんなじペースでやってたって、

どっちかの為にならないじゃん」

 

 

「なるほど。そこまで考えてんのは、

なかなかスゴいけどな」

 

 

「だ、か、ら!

お兄ちゃんはどうしてたの?」

 

 

「そう…だな。

俺のお供は、ラジカセだったかな」

 

 

「いやー無理無理!音楽聴きながらなんて

できっこない!しかもラジカセって!」

 

 

「音楽じゃなくって、ラジオだよ」

 

 

「ラジ…オ?」

 

 

「なんだその、初めて聞きました

みたいな顔は!結構良いんだぞ!

平日の夜に毎日やってた番組でな。

俺は、あの番組のおかげで頑張れたって

言ってもおかしくないからな」

 

 

「え、そんなに良いの!?

お兄ちゃんと似てるとこ多いから、

私もそれで頑張れるかも。

その番組は?まだ終わってないの?」

 

 

「どうだろうな。俺も聴かなくなってから

ずいぶん経つからな。

でもたぶん…やってんじゃねーか?」

 

 

「もー、テキトーなんだから!」

 

 

 

その晩、番組がやっていた時間に、

言われた周波数に合わせてみた。

 

 

「あ、これだ!」

 

 

優しそうで、とてもイイ声の男性が

メインで話している。

 

 

その番組の内容は、頑張る人たちが

みんなで一緒に頑張れるように、

というシンプルなものだった。

 

 

” それでは、お便りのコーナーに

  いきましょう。

  ラジオネーム

 「冬はふとんが恋人」さんから。

 

  『私は中学生で、来年は高校受験です。

     なかなか偏差値が上がらなくて

     悩んでいます。

     志望校を下げた方が良いと、

     クラスの子にバカにされます。

     そのせいで、やる気が少し

     無くなってきてしまいました。

     やる気が出るにはどうすれば良いですか』 ”  

 

 

 

「これ、私と似てる」

 

 

 

 

 

” なるほど。

  いまこのラジオを聴いている人で、

  おんなじようにやる気が出なくて

  悩んでいる人も、いるのかな。

  その人たちが、少しでも前を向けるように、

  この言葉を送ります… ”

  

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまるで、私に向けられた

言葉のように聞こえた。

 

 

みんな、誰かの言葉を待っている。

励まして、応援してくれる人を

必要としている。

 

 

 

次の日から、私の身体は

少し軽くなったような気がした。

 

 

 

 

 

「おっはよー!」

 

 

「お、おはよー…

あれ、なんか良いことあったの?」

 

 

「ううん、別にー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

” 一度や二度、

  うまくいかなかったとしても、

  辞めないで、投げ出さないで。

 

  続けていれば、必ずそれは力になる。

  努力は無駄なことなんかじゃない。

 

 

  しょせん無理だと笑われたって、

  そんな人なんか放っておけば良い。

 

 

  なんのためって、自分のため。

  目指している場所まで、あともう少しだ。

  あとちょっとで手が届く。

 

 

  頑張る苦しさは、

  いずれ楽しさへと変わるから。

 

 

  ツラくなったら頼れば良い。

  いつだって応援するよ、

  たとえ遠く離れたところでも。

 

 

  頑張れ、キミなら必ずできる。 ”

 

 

 

 

 

 

 

自分と同じことで

悩んでいる人はたくさんいる。

 

 

そのみんなで手を取って

進んでいけば、

強く強く歩いて行ける。

 

 

 

 

 

蕾はいつか花が咲く。

 

そのときを、

ただジッと待っている。

 

 

この寒い冬のすぐ後ろから、

春の足音は近づいてきている。

 

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写真提供 [Twitter ‪@___pompom28]