365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「今があるから過去がある」

 

 

 

 

 

 

寝ているときに見る夢は

不思議なもので。

会ったことがない人や、

見たこともない景色が

映し出される。

 

 

内容も非現実で、ヘンテコなものが

多かったりする。

 

見た夢を興奮気味に話されても、

リアクションに困るものだ。

 

 

 

ただ、ヘンテコなものばかりでもない。

 

最近同じ夢を見る。

昔の記憶のどこかにある1ページ。

 

 

始まりはいつも、

普段の現実と何も変わらない光景。

 

 

朝、電車の中。

みんな眠そうな顔をしながら

スマホをいじってる。

 

中には、もたれかかって

寝てしまっている人もいる。

 

 

なんの変哲もない日常の風景は、

途中から一気にひっくり返る。

 

 

乗っている電車に車内アナウンスはなく、

路線図もない。

次が一体どこの駅なのかも分からない。

 

 

そして、とある駅で

乗客の全員が降りていく。

 

ここが終点なのか、と

自分もその流れに乗って

降りようとすると、

目の前でドアが閉まってしまう。

 

 

「え、まだ降りてないけど」

 

 

辺りを見回すと、人は1人もいない。

他の車両を見ても誰もいない。

 

 

自分だけが取り残されたまま、

電車は動き出す。

 

 

そして、どこかも分からない

駅に停車し、ドアが開く。

 

 

降りてみるとそこは、

どこにでもある駅のホーム。

改札をくぐると、目の前には

大きな建物が建っている。

 

 

「どこだ、ここ…」

 

 

一番上に時計がついていて、

「凸」のような形をした

建物の正体は、学校のようだ。

 

 

門の前で立ち尽くしていると、

後ろから声をかけられた。

 

 

「せんせい!おはようございまーす!」

 

「おはようございまーす!」

 

 

小学生の子どもたちが、挨拶をしてきた。

 

 

「ん、先生?俺が?」

 

 

戸惑っていると、別の小学生達に

手を引っ張られた。

 

 

「せんせ!なにボーッとしてるの!

ちこくしちゃうよ!」

 

「ちこくだ、ちこくだー」

 

 

何がなんだかも分からず、

連れていかれるがままに

教室へと入る。

 

 

「え…」

 

 

教壇の前に立つと、信じられない光景が

飛び込んできた。

 

 

 

さっきは全然気づかなかった。

よく見ると、席についているのは

馴染みのある顔ばかり。

 

 

なんと、自分が小学生だった頃の

クラス担任が、自分になっている。

 

 

 

「おいおい…マジかよ」

 

 

一番後ろの窓側の席には、

ボーッと外を眺めている

自分もいた。

 

 

「俺って、

あんなんだったっけ…」

 

 

 

”キーンコーン カーンコーン”

 

チャイムが鳴ると、

起立、礼、着席の号令がかかる。

 

 

「せんせー、昨日の宿題

やってきましたー」

 

 

「俺も!ちゃんとやった!」

 

 

「私もー!」

 

 

このまま俺が、授業をやるのか…。

 

 

「えーっと、宿題…って

なんだったっけ?」

 

 

「先生が忘れてどうするんですか。

将来の夢について書いてこいって

言ったの、先生ですよ」

 

 

お、おぉ…。

さすが優等生だった丸山。

ナイスフォローだ。

 

 

「せんせーが忘れてるなら

オレも忘れればよかったぁー」

 

 

「オレもー」

 

 

うるせーぞ、

やんちゃ坊主共。

 

 

こんな2人が今では一児の父親だなんて、

本当に信じられない。

 

 

 

 

「そ、そうだったな!

じゃあ、宿題のプリントを

机に出してなー」

 

 

 

 

 

違和感に包まれた不思議な授業が

始まろうとしていた。

 

 

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後編へ続く。

 

 

 

 

写真提供 [Twitter ‪@wakana113689 ]