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365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「過去があるから今がある」

 

 

 

 

 

「じゃあ…発表してくれる人!

手ぇあげろー!」

 

 

 

 

 

 

・・・・・。

 

 

 

 

 

 

突然始まった、いや

始めなくてはいけなくなった

謎の授業。

 

 

こうして前に立って見る景色は、

昔見ていたものとは

まるで違ったものだった。

 

 

1人1人の顔が良く見える。

ただ、どこを見てればいいのか分からず

目が泳いでしまう。

 

 

「みんな…書いてきたんだよね?

発表してくれる人…」

 

 

いや、待てよ。

挙手しないのも無理はない。

こういう発表型の授業で、

自分は全く手を挙げるタイプじゃなかった。

 

 

どうせ誰かが答えてくれる。

そうやって何度も場をやり過ごしてきた。

 

 

 「分かった、分かったよ。

前から順番に発表してもらうな!

まずは、祐介!…じゃなかった

高木くん!」

 

 

「えー、俺かよー。

えーっと…将来の夢は、

有名人になることでーす」

 

 

「なんだよそれー」

 

 

「テキトーかよー」

 

 

「ほらほら、静かに!

良いじゃないか!有名人!」

 

 

祐介は今、大工をしてる。

毎日汗水流して、

一生懸命働いている。

 

 

「私は、料理の先生に

なりたいです」

 

 

美里は、確かOL…だったかな。

カッコイイ旦那さんと、

幸せに暮らしてる。

 

 

「俺は、野球選手!!

そんで、女子アナと結婚する!」

 

 

大和は…有名企業の営業マンだ。

めちゃくちゃモテるのに、

彼女とはなかなか長続きしていない。

 

 

このあとも、各々が恥ずかしながらも

将来の夢を発表していった。

 

 

小学生の頃に描いていた将来の夢を

今叶えてるヤツは、2~3人しかいない。

 

 

だけど、夢と現実に差はあったとしても、

みんなそれぞれの幸せに向かって、

立派に生きている。

 

 

 

「次は…峰岸くん」

 

 

昔の俺は、なんと答えるのか

興味深く耳を傾けた。

 

 

 

「僕の将来の夢は…

多くの人のためになる仕事をしたいです」

 

 

 

そうだったっけ…。

そんな夢を持っていたなんて、

すっかり忘れてた。

 

 

今の俺はどうだ。

人のためになる仕事を出来ているか。

 

いや、ただこなすだけの毎日を

ダラダラと過ごしている。

 

 

 

「先生は?先生の将来の夢って

なんなのー?」

 

 

「気になる気になる!」

 

 

「俺の夢?そんなん聞いて

どうするんだよー」

 

 

「大人にも夢ってあるのかなーって!」

 

 

 

大人になってからの夢。

それは、とても現実的で、

堂々と声を張って言えるものではないし、

わざわざ口に出すことでもない。

 

 

「いやー、俺のはいいよ!」

 

 

「良くないよー、ずるいじゃんか

俺たちばっかり!」

 

 

「そーだ、そーだ!」

 

 

こうなったときの一体感には敵わない。

 

 

俺の夢…ってなんだ?

改めて考えてみても、何も出てこない。

 

 

お金を稼ぎまくって豪遊…

いや、えーと、もっとなんかこう…

 

 

考えても考えても、

夢なんてひとつも出てこなかった。

 

 

「大人になるとね、

ツライことがたくさんあります!

楽しめるのは、若いうちだけ!

今を存分に楽しむんだぞ!」

 

 

まだ何も社会の厳しさも

知らない中で、

キラキラした夢が持てるのは

うらやましい。

 

 

そう思っていると、

昔の俺が突然意見を言ってきた。

 

 

 

「大人になったら夢も楽しみも

無くなるなんて、そんなこと

言わないでくださいよ。

だって俺たち、これから大人に

なるんすよ。

どんどんつまんなくなる人生なんて、

嫌になるじゃないですか」

 

 

 「いや…まぁ

そりゃそうなんだけど…」

 

 

「夢、見させてくださいよ。

大人になっても、楽しいことがこんなに

たくさんあるんだぞ、って。

大人が子供に夢をくれないで

どうするんですか。

いつだって俺たちは、

大人の背中を見てるんですよ。

胸張って、いつまでも

カッコつけてくださいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、電車に揺られていた。

 

 

 

あれ、

 

 

 

 

夢か…

 

 

 

 

 

いつの間にか電車で

寝てしまっていたらしい。

 

終点に着いた車内には、

誰ひとり残っていなかった。

 

 

 

急いで電車を降りると、

そこには綺麗な夕焼け空が広がっていた。

 

 

 

 

 

「小学生の俺、いっちょ前なこと

言ってやがったな…」

 

 

 

でも、何ひとつ

間違ってはいなかった。

 

 

 

「子供たちに夢を与える大人に…か」

 

 

 

緩めていたネクタイを強く締め直す。

いつからやる、明日からじゃ遅い。

 

 

思い立った、この瞬間から変えるんだ。

 

 

 

 

 

遠い昔の面影を感じながら、

今よりも輝く未来を信じて。

 

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写真提供 [Twitter ‪@37p_photo]