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365日のストーリー

忘れたくないあの1ページ

「未来へ送る手紙 ②」

 

 

一大イベントが控えている。

 

 

 

楽しみでもあり、不安でもある。

 

 

 

最初から結果なんて出るわけがない。

 

とりあえず経験することが大事。

 

 

 

そんなことは分かってる。

言われなくても分かってる。

 

 

でも、やってみなくちゃ

分からない。

 

 

街の中で奏でていた音楽を、

ステージの上から届けられる。

 

あの場所に立っている姿を

想像すると、緊張と興奮が

入り混じって寝れない日が続いた。

 

 

いざ、本番当日。

 

 

 

小さなライブハウスに入ると、

徐々に想像が現実のものになっていく。

 

 

「いよいよだ。

ここで、私は歌うんだ」

 

 

控え室では何度も何度も

歌のチェックをした。

 

 

私のオリジナルの曲は

まだ10曲にも満たない。

 

少ない曲の中で、

しっかりと届けるんだ、私の想いを。

 

 

凍えるほど寒い冬空の下、

ほぼ毎日路上で歌っていた。

 

人が立ち止まってくれないことなんて

数え切れないほどある。

 

それでもCDを手に取ってくれたり、

チラシをもらってくれたり、

その場でライブのチケットを

買ってくれる人もいた。

 

 

人からもらった言葉に、

何度励まされてきたことか。

 

 

この人たちがいるから

私は歌い続けたい。

 

もっともっとたくさんの人に、

私の歌を、想いを届けたい。

 

 

努力はきっと報われると信じて。

 

 

 

会場の照明が暗くなる。

ステージ上だけに、光が照らされる。

 

 

「よし、大丈夫。
私なら大丈夫」

 

 

これが夢への大きな第一歩だ。

 

 

震える足を前へと踏み出し、

みんなが待つステージへ向かう。

 

 

拍手と歓声に迎えられた。

 

 

 

いや、正しくは

まばらな拍手と小さな歓声。

 

 

初めて立つステージからの景色は、

お客さんの顔が良く見えた。

 

 

その人数は、

すぐにでも数えられるほどだった。

 

 

 

 

自分の無力さに、ただただ悔しさが

こみ上げてくる。

 

気を抜くと涙までが押し寄せてきて、

目の前の景色が滲む。

 

 

ダメだ、泣いちゃダメだ。

 

 

この日、この時間、

この場所へ私の歌を聴きに来てくれた

人達のために、歌うんだ。

 

 

 

楽しんでいる余裕などなかった。

ステージ上の記憶はほとんどない。

 

 

 

あっという間にライブは終わっていた。

 

 

 

この会場を準備してくれた

スタッフの方々にお礼を言って、

ライブハウスを出た。

 

 

いつも背負っているはずの

ギターが、今日はなんだか重い。

 

 

散々バカにされ、笑われてきた

言葉の通りの結末だったことに、

こらえていた涙がドッと溢れ出した。

 

 

 

 悔しい、悔しい悔しい。

 

 

「今日も綺麗な声でした。

良い曲ばっかりで、すげー感動した」

 

 

 

目の前には、この間の男の人がいた。

 

 

「来て、くれたんですね」

 

 

「もちろんじゃないですか!

どうでした?初ライブは?」

 

 

 

「見ての通りです。

私にはこんなもんしか

力はありません。

悔しいです、とても」

 

 

「違いますよ、人数ではなくて

ステージで歌った感想です」

 

 

「え…っと…。

外とは違って声が響き渡るので、

とても感動しました」

 

 

「その想い、忘れないでください。

聴いている俺たちは、もっともっと

感動しましたよ」

 

 

「でも、でも…」

 

 

彼は、人数ではないと言った。

あのステージで歌った想いを

忘れてはいけない…と。

 

 

「俺と一緒に、

もう1回頑張りませんか?」

 

 

「もう…1回」

 

 

「はい!もっともっとあなたの曲が

色んな人に聴いてもらえるように、

宣伝とか、サポートとか

一生懸命やります!

いや、やらせてください!」

 

 

この人は、とても暖かい人だ。

近くにいると、冷えきった心が

どんどんあっためられていく。

 

 

「はい、ぜひ…

よろしくお願いします!

あの、お名前は?」

 

 

「俺は翔って言います。

近々お茶でもしながら

打ち合わせしましょう!」

 

 

 

「はい…はい!お願いします!」

 

 

 

暗闇にいた私に、

そっと手を差し伸べてくれた。

 

 

1人じゃないと分かった途端、

一気に気持ちが軽くなった。

 

 

 

ここからが勝負。

 

 

 

私たちの新たなスタートへ向かって。

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写真提供 [Twitter ‪@aiai_photo]